アプローチの計画  

 敷地の中で建物の配置を決めるときに考えなくてはならないことのひとつにアプローチの計画があります。仮にも建築士であれば玄関を計画する段階で、道路からどうやって玄関までたどり着くかはある程度想定するはずです。お客様が目にする建物の計画の中には目に見えなくてもアプローチの計画が漠然とした形でも入っていると考えてもいいでしょう。ですからこれからの話は建物の配置が決まって、玄関の位置がはっきりしているという前提で考えることにします。そうしないとアプローチと建物の関係の自由度が大きすぎて計画が煮詰まっていかないことになってしまうからです。
 右のような敷地に建物を計画したとします。 この場合最も単純に考えれば下図のようなアプローチができるわけですが、アプローチは直線ではない方がいいというのが定説になっています。

 下右の図のようなアプローチの方がいいわけです。その理由としていろいろな説があります。

 まず建築計画的には玄関を開けた時に部屋の中が外から丸見えになるのがいけないという説です。

 次に空間心理学的にいうと進路を曲げることで距離感を感じさせることができ、空間的な豊かさを演出できるということです。

 最後に風水的に良い気は、蛇行してくるからという説もあります。

 右の図はクランクのとり方をさらに極端にした例です。これほど余裕のある敷地でこのようなアプローチを計画することは少ないと思いますが、もっと建物が道路に近い場合などにこのようなアプローチをとることが良くあります。

 アプローチのとり方で、基本となるのはこれだけです。あまりに単純で申し訳ないのですが、これがカーポートの配置などと関係してくると考慮することが急に多くなります。

 もうひとつ忘れられがちな点を押さえておきたいと思います。それはアプローチが往々にして庭空間を分断するという点です。上記の3パターン、どれもアプローチで庭が右左に分けられることになります。その際、それぞれの空間の意味づけを考えておいた方がいいと思います。庭として使う部分は居間などに繋がりやすいところで、居間から庭が見えたほうがいいでしょう。そこから分断された庭空間は、たとえば雰囲気を変えた庭に作るもよし、ゴルフの練習場所など専用の場所として性格付けするもよし、物干し場や日曜大工の作業場のように見せたくない外部スペースとして区分けするもよし、というわけです。どうしても分断したくない場合は、アプローチを飛石のようにソフトな作りにし、空間の融合を図ります。

アプローチの巾

 アプローチを実際に計画するときにはその巾をどのくらいとったらいいでしょうか。
90センチ巾のアプローチ 120センチ巾のアプローチ 150センチ巾のアプローチ
 人の大きさとアプローチの巾を上の図で示してみました。経験的に言えば120センチ前後が多いと思いますが、巾が広いほどフォーマルな印象のアプローチになり巾が狭いほどインフォーマルな印象を受けます。
 右の図は園路や和風の延段などで作られる45センチ巾の通路です。ここにはわざと注意深く歩かせるように仕向け、周りの景色を眺めさせたり、お茶会などのセレモニーに向う気持ちを高めさせる意図があります。

 

オープンな90センチ巾のアプローチ 囲われた90センチ巾のアプローチ

 同じ巾でも周りの状況によって空間から受ける印象は大きく変わります。上の図で左は低い植栽などで囲まれたオープンなアプローチ、右は壁に囲まれたアプローチです。囲まれたアプローチの方が窮屈に感じられることが想像されます。

アプローチの仕上げ

 アプローチの仕上にはいろいろありますが、玄関先ということもあり、ある程度高級感があって、汚れにくいものが好まれます。最終的にはそれらの性能とコストとを見比べて決めることになると思いますが、下の表におおよその性質とコストの傾向を示しました。
  汚れ 耐久性 コスト 備考
自然石 石質により耐久性、価格に差がある。
タイル    
レンガ   風化するが、それがレンガの味になる。
インターロッキング   下地の作りによって耐久性が変わる。
モルタル洗出し   種石の種類で色合が変わる。
樹脂仕上げ   洗浄が難しい。
モルタル仕上げ   細かいひびは避けられない。
コンクリート洗出し   汚れが気にならない。
コンクリート一撥刷毛引き ローコスト、高耐久性。

 表のコストの列は、上に行くほど高くなる傾向を示しています。ただタイルなどは製品の種類が多いので、金額にも巾があります。上手に選べばインターロッキング並みの金額のものもあります。

 またインターロッキングなどは面積が広くなると単価が安くなる傾向が大きいので、大面積向きです。逆に小さい面積では切り物の割合が大きくなるのでコスト的に不利です。反対にモルタルの洗出しなどは職人の技術に負う部分が大きいので面積が大きくなってもそれだけ日数がかかるだけでスケールメリットはありません。

 汚れに関しては自然石、タイルなどは水をほとんど吸わないので汚れそのものが付きにくいです。それに対しコンクリートの洗出しは汚れても気にならないという印象です。インターロッキングは水を吸いますし、表面がざらざらしているのでついた汚れはほとんど落ちません。地球にやさしい透水性の製品は汚れに弱いと考えた方がいいでしょう。

 耐久性に関しては当然下地の状態にもよります。下地のコンクリートがひび割れてくればたいていの仕上はひび割れてきます。コンクリートでなくともインターロッキングやレンガを敷くときの砕石の転圧状態も大切です。砕石の厚みが少なかったり転圧が不十分だと車が載ったときなどに沈下します。

 仕上げを選ぶ際に建物の玄関ポーチの仕上に合わせたものをアプローチまで伸ばすことも少なくありません。その際、タイルなどは外部用のものを使う必要があります。

 また曲線的なアプローチではタイルなどはきれいに納まらないことが多いので検討が必要です。

以上

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